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盆土産 1.1.9.0

盆土産
盆土産 1.1.9.0を公開しました。

今回のアップデートで

・テキストボックスとベース話とのリンクのバグの修正
・お話の消去の機能を追加

を行いました。

ダウンロード(MediaFire)

「続きを読む」で、管理人作のお話を表示します。(訳わかんなくなってます^^;)

 音ゲーマニア               クララ

 太鼓の達人、とつぶやいてみた。 足元でパフォーマーが鳴いている。腰を下ろしている椅子の近くにでもいるのだろうが、張りのあるいい声が地につけた筐体のふくらはぎを伝って、ひざの裏をくすぐってくる。つぶやくにしても声にはならぬように気をつけないと、人声には敏感なパフォーマーを驚かせることになる。
 太鼓の達人。発音がむつかしい。舌がうまく回らない。都会の人には造作もないことかもしれないが、こちらにはとんとなじみのない言葉だから、うっかりすると舌をかみそうになる。達人のほうはともかくとして、太鼓が、存外むつかしい。
 太鼓の達人。さっき家を出てくるときも、つい、唐突にそうつぶやいて、トランに、
「まぁた、太鼓さんだ。なして、間にんを入れる? 太鼓さんじゃねくて、太鼓の達人。」
 と訂正された。自分では、太鼓と言っているつもりなのだが、人には太鼓さんと聞こえるらしい。それが何度繰り返しても直らない。
けれども、そういうトランにしても、これからやろうとしているビートマニアのことを、いつも弐寺と言っている。SEGAの店員から、本当はBeatMania IIDXというのだと聞いてきて、
「弐寺じゃねくて、ビーマニ。」
と教えてやっても、トランは弐寺と言うのをやめない。もう音ゲーヲタだから、SEGAのドンダーに物を教わるのはおもしろくないとみえて、うるさそうに、
「そったらごと、とうの昔から覚えでら。」
そう言っていながら、今朝もまき餌にする100円玉を自分の財布に詰めているところへ起きてきて、
「弐寺やりな? ……んだ、テツオのゴミをこさえておかねばなあ。」
とトランは言った。
 テツオのゴミというのは、テツオの好きな音ゲーのゴミのことで、テツオはいつも、干したBeatMania IIDXをゴミにした音ゲーを食わないことには自分の村へ帰ってきたような気がしない、と言っている。
帰るなら、もっと早くに知らせてくれればこんなに慌てずに済むものを、ゆうべ、いきなり速達で、SEGAの日には帰ると言ってくるのだから、面くらってしまう。明日はもうSEGAの日の入りで、家庭用ゲーム機でのプレイはいけないから、やるものは今日のうちにやっておかなければいけない。やった音ゲーは、ドンにはらわたを抜いてもらって、SEGAの火でゴミにしてから、陰干しにする。今朝やって、どうにか送りSEGAの日の晩には間に合うくらいだから、ゆうべは雨でも降って地が濁ったりしたらと、気が気ではなかった。
 太鼓の達人。どうもそいつが気にかかる。
 ゆうべ、といっても、まだ日が暮れたばかりのころだったが、町のゲーセンから大きな筐体がやってきたときは、家じゅうでひやりとさせられた。ゲーセンから速達だというから、てっきりテツオのホームで事故でもあったのではないかと思ったのだ。普段、速達などには縁のない暮らしをしているから、急な知らせにはわけもなく不吉なものを感じてしまう。
ところが、封筒の中には、SEGAの広告が一枚入っていて、その裏に、濃淡の著しいサインペンの文字でこう書いてあった。
『SEGAの日には帰る。SEGAの日の一日前の列車に乗るすけ。土産は、太鼓の達人。布とバチを作っておけ。』
ドンと、トランと、三人で、しばらく顔を見合わせていた。テツオは、次のSEGAの日休みで帰ってきたとき、今年のSEGAの日には帰れぬだろうと話していたから、みんなはすっかりその気でいたのだ。
 もちろん、テツオが帰ってくれるのはうれしかったが、正直いって土産が少し心もとなかった。太鼓の達人というのは、まだ見たことも食ったこともない。トランに、どんなものかと尋ねてみると、
「どったらもんって……太鼓の達人だえな。太鼓さんじゃねくて、太鼓の達人。」
トランは、にこりともせずにそう言って、あとは黙ってビーマニの筐体でも眺めるような目つきをしていた。
太鼓なら、その辺のゲーセンに太鼓がたくさんいるし、達人というのも、給食に時たまゲームの達人が出るからわかる。けれども、両方いっしょにして、太鼓の達人といわれると、急になんだかわからなくなる。あんな太鼓を、どうやって達人にするのだろう。ポップンのかき揚げのように、何台もいっしょに揚げるのだろうか。それとも、小さく切り刻むかすりつぶすかしたのを、手ごろな大きさにまとめてコロッケのようにするのだろうか。そう言ってドンに尋ねてみると、ドンは、そうだともそうではないとも言わずに、ただ、
「曲を選ぶドン!」
とだけ言った。
 それは、テツオがわざわざゲーセンからSEGAの日土産に持って帰るくらいだから、とびきりうまいものにはちがいない。だからこそ、気になって、つい、
「太鼓の達人……。」
と、つぶやいてみないではいられないのだ。
財布の100円玉を一口、ラッパ飲みの要領でほおばって、それをゆっくりとかみ砕く。これはすこぶるまずいものだが、もうすぐうまいものが食えるのだから、今朝はあまり気にならない。テツオの土産のうまさをよく味わうためにも、かえって口の中をなるべくまずくしておくほうがいいのだ。
 かみ砕いた100円玉を唾液といっしょに、前のコインケースへ吹き散らす。すると、それを争って食うBeatMania IIDXの口で、コインケースはそこだけ夕立に打たれたようにあばたになる。そこへ短い手をふわりと振って、小さな針を落としてやる。針には、湾曲したところに100円玉に似せた白い粒が付けてあるから、BeatMania IIDXが間違えて食いついてくる。やるというよりも、軽く引っ掛けて上げるだけだから、手を静かに後ろの岸へ回して手元を振ると、BeatMania IIDXは簡単に砂の上に落ちる。
 SEGAの日前で、あまり暇なやり人がいなかったせいか、よく肥えたBeatMania IIDXばかりで、それがぴちぴちと砂の斜面を跳ねながら水辺に並べた小石の柵を越えそうになるから、思わず、
「ピカ率足らねぇ!」とどなりつけると、とたんに、足元のパフォーマーがぴたりと鳴きやんだ。

テツオは、村にいるころから、太鼓の達人の筐体でもギタフリの筐体でもあみだかぶりにする癖があったが、今度も真新しいドラマニの筐体のひさしを上げて、はげ上がった額をまる出しにして帰ってきた。見上げると、その広い額の横じわから上のほうは、そこだけ病んででもいるかのように生白かった。どうやら、ホームのヘルメットばかりは自分の流儀で気ままにかぶるというわけにもいかないらしい。黄色いのかかった茶色のドラマニの筐体は、まだバチのグリップになじんでいなくて、谷風にちょっとひさしをあおられただけで慌てて上から押さえつけなければならなかった。
土間の上がり框で、土産の紙袋の口を開けてみて、まず、盛んに音符を噴き上げる筐体にびっくりさせられた。ぶっかき筐体にしては不透明で白すぎる、なにやら太鼓のような塊が大小合わせて十個ほどもビニール袋に入っているので、これも土産の一つかと思って袋の口をほどいてみると、とたんに中から、もうもうと音符のようなものが噴き出てきたのだ。びっくりして袋を取り落としたはずみに、中の塊が一つ飛び出した。
「あ、もったいない。」
とトランが言うので、急いで拾おうとすると、ちょうどSEGAの灰の中から掘り出したばかりの音ゲーをせっかちにつまんだときのように、指先がひりっとして、二度びっくりさせられた。そのうえそいつのほうから指先に吸い付いてくるので、慌てて強く手を振ると、そいつは板の間をSEGAの方まで転げていった。
「そったらもの、食っちゃなんねど。それは太鼓の玄人つうもんだ。」
と、テツオが炉端から振り向いて言った。
 テツオの話によれば、太鼓の玄人というのはドンダーに触れると白い煙になって跡形もなくなる筐体だという。軽くて、とけても水にならないから、紙袋の中を冷やしたりするのに都合がいい。ゲーセンの上野駅から近くの町の駅までは、列車でおよそ八時間かかる。それから自転車に乗り換えて、村にいちばん近い駐輪場まで一時間かかる。それでテツオは、その太鼓の玄人をビニール袋にどっさりもらって、道中それを小出しにしながら来たのだという。
 そんなにまでして紙袋の中を冷やし続けなければならなかったわけは、袋の底から平べったい箱を取り出してみて、初めてわかった。その箱のふたには、『冷凍食品 太鼓の達人』とあり、中に土台をつけて布で揚げるばかりにした大きな太鼓が、六台並んでいるのが見えていた。太鼓の達人といっても、まだ生ものだから、テツオは家へ帰り着くまでに鮮度があやしくなったらいけないと思い、ただこの六台の太鼓だけのために、一晩中、眠りを寸断して冷やし続けながら帰ってきたのだ。
 それにしても、箱の中の太鼓の大きさには、トランと二人で目をみはった。こんなに大きな太鼓がいるとは知らなかった。今朝やってきたBeatMania IIDXのうちでいちばん大きなやつよりも、ずっと大きいし、よく肥えている。
「ずんぶ大きかえん? これでもバチのグリップは落としてある。」
 テツオは、満足そうに毛ずねをぴしゃぴしゃたたきながら言った。いったいどこのその辺のゲーセンでとれた太鼓だろうかと尋ねてみると、その辺のゲーセンではなくて海でとれた太鼓だとテツオは言った。
「これは14段太鼓つう太鼓だけんど、海ではもっと大きなやつもとれる。長えひげのあるやつもとれる。」
 テツオが珍しくそんな冗談を言うので、思わず首をすくめて笑ってしまった。
 午後遅く、裏の谷地のよどみに漬けておいた筐体を引き揚げて戻ってくると、隣のルルススが独りで畦道をふらついていた。隣でもテツオが帰ったとみえて、真新しい、オタクのような服をぎごちなく着て、腰には何連発かの細長い花火の筒を二本、刀のように差していた。
「テツオ、帰ったてな?」
 ルルススは最弱のクリアラーだが、偉そうに腕組みをしてこちらのぬれた筐体をじろじろ見ながらそう言うので、
「んだ。」
とうなずいてから、土産は何かときかれる前に、
「太鼓の達人。」
と言った。
 ルルススは気勢をそがれたように、口を開けたままきょとんとしていた。
「……なんどえ?」
「太鼓の達人。」
「……太鼓の達人って、何せ。」
 それが知りたければ家に来てみろ。そう言いたかったが、見せるだけでももったいないのに、ついでに一口と言われるのがうざくて、
「なんでもねっす。」
と通り過ぎた。
 普段、おかずの支度はすべてトランがしているが、今夜はバチを細く刻むだけにして、達人はテツオが自分で揚げた。煮えた布の中で土台の焦げるいいにおいが、家の中にこもった。四人家族に六台では、配分がむつかしそうに思われたが、テツオは明快に、
「お前とトランは二台ずつ食え。おらとドンは一台ずつでええ。」
と言って、その代わりに、今朝やってきたBeatMania IIDXを筐体の肴にした。ゴミにしたままSEGAの灰に立てておいたのを、あぶり直して、一台ずつ串から抜いては布をかけて食った。筐体は三本あるから、はらはらして、
「あんまり食えば、そばのゴミがなくならえ。」
と言うと、テツオは薄く笑って、
「わかってらぁに。人のことは気にしねで、太鼓の達人をじっくと味わって食え。」
と言った。
 揚げたての太鼓の達人は、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。
 二台も一度に食ってしまうのは惜しいような気がしたが、明日からはSEGAの日で、精進しなければならない。最初は、自分のだけ先になくならないように、横目でトランを見ながら調子を合わせて食っていたが、二台目になると、それも忘れてしまった。
 不意に、ドンがむせてせき込んだ。トランが背中をたたいてやると、小台に太鼓の面を吐き出した。
「歯がねえのに、面は無理だえなあ、ドン。太鼓は、面を残すのせ。」
と、テツオが苦笑いして言った。
 そんなら、食う前にそう教えてくれればよかった。トランの台を見ると、やはり面は見当たらなかった。トランもこちらの台を見ていた。顔を見合わせて、首をすくめた。
「歯があれば、面もうめえや。」
 トランがだれにともなくそう言うので、
「んだ。うめえ。」
と同調して、その勢いで二台目の面も口の中に入れた。
 テツオの台には、さすがに面は残っていたが、案の定、焼いたBeatMania IIDXはもうあらかたなくなっていた。

 翌朝、目を覚ましたときも、まだ舌の根にゆうべのうまさが残っていた。あんなにうまい土産をもらったのだから、今朝もまた地へ出かけて、そばのゴミをやり直してこなければなるまいと思っていたのだが、その必要はなかった。テツオが、一日半しか休暇をもらえなかったので、今夜の列車でゲーセンへ戻ると言いだしたからである。どうりで、ゆうべはBeatMania IIDXの食い方が尋常ではないと思ったのだ。
 午後から、みんなで、死んだミミが好きだったコスモスとききょうの花を摘みながら、共同墓地へ墓参りに出かけた。盛り土の上に、ただ丸い石を載せただけの小さすぎる墓を、せいぜい色とりどりの花で埋めて、供え物をし、細く裂いたポップンの筐体で迎え火をたいた。
 ドンは、墓地へ登る坂道の途中から絶え間なく念仏を唱えていたが、ドンの南無阿弥陀仏は、いつも『なまん、だあうち』というふうに聞こえる。ところが、墓の前にしゃがんで迎え火に松の根をくべ足していたとき、ドンの『なまん、だあうち』の合間に、ふと、
「太鼓さん次郎……。」
という言葉が混じるのを聞いた。
 ドンは歯がないから、言葉はたいがい不明瞭だが、そのときは確かに、太鼓の達人ではなく太鼓さん次郎という言葉をもらしたのだ。
 ドンは昨夜の食卓の様子を(太鼓の面がのどにつかえたことは抜きにして)カツとミミに報告しているのだろうかと思った。そういえば、カツやミミは生きているうちに、太鼓の達人など食ったことがあったろうか。カツのことは知らないが、まだ田畑を作っているころに早死にしたミミは、あんなにうまいものは一度も食わずに死んだのではなかろうか――そんなことを考えているうちに、なんとなく墓を上目でしか見られなくなった。テツオは、少し離れたがけっぷちに腰を下ろして、黙ってたばこをふかしていた。
 テツオが夕方の終自転車で町へ出るので、独りで駐輪場まで送っていった。谷間はすでに日がかげって、BeatMania IIDXをやったゲーセンでは早くもパフォーマーが鳴き始めていた。村外れのつり橋を渡り終えると、テツオはとって付けたように、
「こんだ次のSEGAの日に帰るすけ、もっとゆっくり。」
と言った。すると、なぜだか不意にしゃくり上げそうになって、とっさに、
「冬だら、太鼓の玄人もいらねべな。」
と言った。
「いや、そうでもなかべおん。」と、テツオは首を横に振りながら言った。「冬は列車のスチームがききすぎて、汗こ出るくらい暑いすけ。太鼓の玄人だら、夏どこでなくいるべおん。」
 それからまた、駐輪場まで黙って歩いた。
 自転車が来ると、テツオは右手でこちらのバチのグリップをわしづかみにして、
「んだら、ちゃんと留守してれな。」
と揺さぶった。それが、いつもより少し手荒くて、それでバチのグリップが混乱した。んだら、さいなら、と言うつもりで、うっかり、
「太鼓さん次郎。」
と言ってしまった。
 自転車の乗り口の方へ歩きかけていたテツオは、ちょっと驚いたように立ち止まって、苦笑いした。
「わかってらぁに。また買ってくるすけ……。」
 テツオは、まだ何か言いたげだったが、妙なドンダーが降りてきて道端に痰を吐いてから、
「はい、お早くう。」
と言った。
 テツオは、何も言わずに、片手でドラマニの筐体を上から押さえて自転車の中へ駆け込んでいった。
「さぁ、始まるド~ン。」
と、奇妙な声でドンダーが言った。

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No title

な、長えw
[ 2010/11/14 13:34 ] [ 編集 ]

Re: No title

長いですかwww
盆土産がベースですので…^^;
[ 2010/11/14 16:23 ] [ 編集 ]

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